リウマチで
食べてはいけないものって?
高血圧や脂質異常症、糖尿病などの持病がなければ、特に食事制限する必要はありません。それよりも 、骨粗鬆症や筋肉量低下、体脂肪増加を予防することが大切です。「栄養を摂らないと」と思って、白米やパン、菓子類、ジュースなどの炭水化物や、普通牛乳や脂っこい肉類などの脂質を摂りすぎるのは避けましょう。
体重が増えると足腰の関節にも負担がかかりますし、痛みやすくなります。
中でも牛乳は、カルシウムもタンパク質も摂れる優秀な食品です。しかし、過剰摂取すると脂肪も摂りすぎてしまうので、普通牛乳よりも低脂肪乳や無脂肪乳をお勧めします。
リウマチによる骨粗鬆症や
筋力低下・脂肪増加を
防ぐための食事ポイント
ポイント1
栄養バランスの取れた食事を
リウマチを患っている患者様は、食欲がないことに悩まれている方も少なくありません。そのため食事量が不足している方もいらっしゃいます。栄養バランスの良い食習慣は、体力を保つのに欠かせない存在です。また肥満は生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)の原因にもなりますし、膝などの関節への負担が大きくなります。肥満にならないよう食べ過ぎにも気をつけてください
さらに、筋力低下や薬によるカルシウム不足、貧血などを防ぐための食習慣も身につけましょう。
ポイント2
たんぱく質の摂取は肉より魚で
関節痛に悩む患者様は、運動不足による筋力低下が起こりがちです。痛みが軽い場合は無理のない範囲で運動し、筋肉を作るのに必要なタンパク質を摂取しましょう。タンパク質が含まれる食品としては魚肉類、乳製品、大豆製品などが挙げられます。この中で、特に積極的に摂取していただきたいのが魚です。魚の中でも特にサンマやイワシ、サバなどの青魚には、関節の炎症を抑える効果に期待できるEPA ( エイコサペンタエン酸 ) が含まれています。ぜひ積極的に食べていきましょう。
ポイント3
カルシウムは骨粗鬆症の予防に
リウマチの患者様で特に気をつけていただきたいのが骨粗鬆症です。リウマチで関節がもろくなるのに加えて、運動不足やステロイドの長期投与などがあると、骨粗鬆症のリスクが高まります。骨粗鬆症や骨折を予防するためにもぜひ、カルシウムは積極的に摂取しましょう。
またカルシウムの吸収を促すビタミンDも、ぜひ一緒にとってください。カルシウムが含まれる食品としては、牛乳やチーズなどの乳製品、小魚、ほうれん草などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻類が挙げられます。またビタミンDは、キノコ類などに多く入っています。
ポイント4 サプリメント(健康補助食品)の使用は、医師に相談を
近年では、ドラッグストアやオンラインストアなどで気軽にサプリメントを購入できるようになりました。購入しやすくなったため、活用される患者様も増えていいますが、一部では健康被害が報告されていたり、処方された薬との相性が悪かったりするサプリメントもあるため、慎重に使うことを推奨します。どうしても飲みたいサプリメントがありましたら、かかりつけの医師・薬剤師に相談し、治療の効果を弱めたり強めたりしないものを処方してもらいましょう。
リウマチで日常生活に
気を付けるべきこと
タバコは厳禁
心臓や血管、肺へ悪影響を及ぼすと知られているタバコですが、近年の研究結果では、関節リウマチの発症リスクまで高めてしまうと報告されています。加えて、薬の効能まで下がってしまうため、治療にも悪影響を与えてしまうこともあります。さらに関節リウマチの患者様の多くは、肺の疾患を併発しています。間質性肺炎などの肺疾患は悪化すると、最悪の場合、死に至る危険性もあります。また電子タバコによる影響はまだハッキリとされていませんが、ほとんどの医療機関では通常の喫煙と同じだとみなされます。喫煙回数を減らすだけでは効果が発揮されませんので、きちんと禁煙を目指してください。もし自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診頂き、ニコチンパッチや禁煙治療補助薬などの治療をご検討ください。
歯周病のケア
近年の研究では、歯周病によって口腔の細菌叢が悪い状態でいると、関節リウマチの発病リスクに影響を与えると報告されています。患者様全員に該当するとは限りませんが、オーラルケアで歯の健康を守っておくことは、膠原病やリウマチ疾患の治療にも不可欠とされています。
歯の状態が悪いと、骨粗鬆症の治療効果が不十分になる可能性もあります。かかりつけの歯医者さんを作ることで定期的にチェックできる環境を確保して、歯の健康を守っていきましょう。
睡眠・休養をしっかり取る
疲れを解消させずにいると、関節リウマチの病状が悪化しやすくなります。身体的・精神的のどちらにおいても、過度な疲労は関節リウマチに悪影響を及ぼします。ストレスを解消させる、規則正しい生活を送る、休息する時間を取るなどを心がけましょう。
ストレスをゼロにすることは難しいかと思われます。患者様によっては「多少あった方が元気になる」という方もいらっしゃいますが、大きな疲れは身体に悪影響を与えるので、疲れを溜めないようには気を付けましょう。
関節リウマチは、働き盛りの年代の患者様が多くいる疾患です。女性のイメージが強いのですが、肉体労働に従事していた男性が関節リウマチを発症するケースも存在します。もし仕事の環境などを調整してもらえるのでしたら、肉体的負担の少ない部署へ異動してもらうよう交渉することをお勧めします。また夜勤労働に従事していた方の場合は、勤め先に相談し、日勤メインの業務に変えてもらうと良いでしょう。安定し続けている状態でしたら、一時的に無理をしてもしのげてしまうかもしれませんが、長い目で見ると不規則なシフト勤務や夜勤労働は不向きです。
「仕事が楽しい」と思ってきた方には辛いかもしれませんが、今のご自身の体調に合っているのか、何がストレスになっているのかなどを振り返ってから、向いている仕事を選ぶようにしましょう。
定期的に体を動かして、関節や筋肉の機能を保つ
炎症や関節の腫れ、痛みがひどい場合は、無理せず安静にして過ごしましょう。関節リウマチ発症後すぐに薬を飲んでも、初めはなかなか薬の効果が得られないこともあります。2~3ヵ月経過してから、徐々に症状が和らぐ方もいらっしゃいますのでご安心ください。症状が緩和されて痛みが減り、腫れもひいてきましたら、無理のない範囲で少しずつリハビリテーションや軽めの運動を毎日行いましょう。
安静にし続けると筋力がぐっと減りやすくなるため、1ヵ月休んでいた方の場合は、焦らずに2ヵ月ぐらいかけて筋力を戻すことをイメージした方が良いでしょう。
また「フレイル」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。フレイルとは、筋力低下などで身体活動性が衰えた結果、日常生活上の動作もうまくできなくなり、介護施設の入所や寝たきりのリスクを高めてしまう状態です。高齢者に多く見られるのですが関節リウマチも、フレイル状態になりやすい疾患でもあります。特に、高齢者でかつ関節リウマチを患っている方にとって、筋力の低下は大きな問題となるのです。現在の年齢などにもよりますが、トレーニングを始めていけば徐々に筋力は改善されます。80歳を超えた方でもトレーニングの成果は得られますので、どの年代にいる方でも諦めずにチャレンジしていただきたいです。諦めると一気に元の状態へ戻るため、毎日継続していける範囲の運動を、コツコツ続けていくことが重要です。ご自宅内でも行いやすい体操や、炎症が強い関節を動かさずに済むトレーニング方法もありますので、ご自身の身体と相談しながら習慣化していきましょう。
また、関節リウマチの方に重要視していただきたいのが、大腿四頭筋という太ももの筋肉です。太ももの筋肉の中では一番太いのですが、膝の関節炎が重症化すると、膝を安静にし続けることで細くなってしまいます。関節リウマチを初めて発症した方の中には、太ももがかなりやせ細った状態で、ヨロヨロ歩いて受診される方も多くいらっしゃいます。
当院は、薬を処方して膝の関節炎を落ち着かせることは可能ですが、太ももの筋力を高めることにつきましては、どうしても患者様によるリハビリテーションが必要になります。膝の痛み・腫れが緩和された後は、ゆっくりで構いませんので、スクワット運動から始めていきましょう。立ち姿勢で行うスクワットが難しい状態でしたら、寝た状態でも行えるトレーニング方法についてお教えするので、遠慮せずにご相談ください。また、変形性膝関節症も発症している方、肥満体型の方、膝や足首の関節痛が重い方は、ウォーキングよりも、プールでの運動や室内でのエアロバイクをお勧めします。ご自身でリハビリを続けるのが難しい場合は、リハビリ科が設置されている医療機関へご紹介することもあります。適切に筋力を高めることはリウマチ治療において重要ですので、ぜひ筋力アップに意識していただければと思います。
洋式の生活+関節に負担をかけない自助具・装具利用で暮らしやすく
リハビリ科の医師に相談し、持ちやすい食器や装具を作ってもらうこともあります。これらを活用することで、関節への負担が減りやすくなります。
また、足の指の変形がひどくなると、足の形に合った靴を探すだけでも大変になるかと思われます。大きめの靴で対応することも可能ですが、それでも難しい場合は、医療用の靴をオーダーメイドする必要があります。今は昔よりもデザイン性に優れた靴が出ていますので、お悩みの方はぜひ、ご相談ください。また装具や靴などの製作費は、医療保険の対象となる可能性があります。
健康な方でしたら着替えや食事、入浴、排泄などの動作を問題なく行えますが、関節リウマチを発症している方にとっては、負担の大きい動きになることも多くあります。
一般的には和式の生活様式より、洋式の方が関節に負担がかからないと言われています。正座よりも椅子に座った方が、膝や股関節の負担も軽減できますし、布団よりもベッドの方が起き上がりやすくなります。特に正座は、関節リウマチの患者様にとってはかなりの負担を強いてしまいます。
近年ではパソコンのキーボードや、スマートフォンの長時間使用などによる指の腱鞘炎、肩こり、首の痛みなどが問題視されています。便利な機器ですが、同じ姿勢で過ごす時間が増えやすくなるため、先述した症状が起こりやすくなります。こまめに小休止を入れたり、ストレッチなどで身体を動かしたりすることをお勧めします。